この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
 友人や同僚に恵まれたおかげで毎日はとても充実している。

 だけど、同世代の友人や同期が結婚・出産と新しいステージに進んでいくなかで、自分だけが取り残されてしまったような寂しさも拭えない。

(私、本当に素敵な大人の女性になれているのかな?)

 素敵な女性に恋は必須じゃないこと、頭では理解している。だけどどうしても、異性ときちんと関係を築けない自分はなにかが足りないんじゃないか?と考えてしまう。

 コンプレックスの根は想像以上に深くて、環からあと一歩の自信を奪っていく。

「速水さん? どうかしましたか」

 彩芽に問いかけられ、環はハッとして首を横に振る。

「ううん、なんでもない。私、さっそく緑邦大病院にあいさつに行ってくるね」

 PCをスリープモードにして、環は席を立つ。そのとき――。

「じゃ、外回り行ってきます!」

 環とぴったり同じタイミングで真後ろの席の男性社員、(きく)()(たけ)()も席を立った。

「ははっ、気が合うね」
「ほんとですね」

 年齢はふたつ上だけれど、彼は中途入社なので社歴は環のほうが長い。
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