この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
 のんびりとした仲裁の言葉をかけるのは、もうひとりの親友である(たか)(はし)()()

 三人のなかでは一番童顔で黒い丸眼鏡をかけている。

 ファッションもかなりカジュアルなので、二十代半ばと言ってもまだまだ通りそうだ。

 麻美は萌香にも鋭い眼差しを向ける。

「私は萌香にも怒ってるからね。三次元のいい男を前にして、なんでスマホに気を取られてるのよ」
「だって、推しの新ストーリーが今日配信だったんだもん。チェックを怠るわけにはいかないよ!」

 萌香は環と同じく独身で、職業は薬剤師。自分たちは薬学部時代の仲間なのだ。薬学部は医学部同様に六年制なので一緒に過ごす時間も長く、もはや友人というより家族に近いような遠慮のない関係だ。

 萌香は幕末を舞台にした某アニメの大ファンで、持てる時間とお金のすべてを推しに注ぎ込んでいる。ウジウジと焦ったり迷ったりしている環とは違い、恋人不要・生涯独身を宣言していた。

 今日も数合わせのために参加してくれただけで、異性との出会いにはまったく興味がなかった様子だ。

「もったいないなぁ、萌香が一番男ウケのいい顔なのに」
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