この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
 舞台はIT関連事業が興隆しはじめた九十年代の米国。

 相性最悪でいがみ合っていた男女がタッグを組んで、会社を大きくしていく物語だ。

 王道のサクセスストーリーにワクワクさせられるし、高史郎の言うとおり主役ふたりの何気ない会話が小洒落ていて楽しい。安易に恋愛が絡まないところも環は気に入っていた。

 なにより主役の女性が本当にかっこいいのだ。

「パンツスーツでビジッと決めて、男性社会に媚びたりせずに自力で大きな仕事をつかみ取っていく。彼女にすごく憧れて……だから民間企業への就職も捨てきれなくて」

 そこまで語ってから、ふと我に返る。

「いや、フィクションだってことはわかっているんだけどね。それに映画に憧れてなんて不純な動機じゃダメだってことも」

 呆れないでほしいと頼んだけれど、まだ学生とはいえ成人した女性の発言としてはやはり幼すぎたかもしれない。急に恥ずかしくなり環はうつむく。

「別に動機はなんだっていいんじゃないか」

 想定外に優しい声が環の頭上に降ってくる。

「そうかな? ……要くんはなにをきっかけにお医者さまを目指したの?」
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