この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
 緑邦大病院のお偉方――教授たちとなにやら談笑している様子だ。もっとも高史郎の表情はにこやかとは言いがたいものだけれど。

(それにしてもスーツが似合うなぁ)

 彼と会うのはいつも病院。青いスクラブに白衣を羽織った姿ばかり見ているので、ドレスライクなブラックスーツという装いは新鮮に映る。深紅のネクタイも色気があって素敵だった。

「速水チーフ! ちょっとこっちいいですか?」

 呼ばれて、環はハッと我に返る。

 高史郎に見惚れていたという事実がたまらなく恥ずかしい。

 彼と再会してからというもの、速水環のキャラクターは崩れていく一方だ。

「はーい、今行きます」

 気持ちを切り替えるように大きな声で答えて環は呼ばれたほうに足を向けた。

 ドクターたちはそれなりに食事やドリンクを楽しんでくれているようだったが、ホスト側の自分たちは忙しくて食事をする余裕もない。

 やっと少し余裕ができた隙にウーロン茶をグイッと飲み干して空腹を満たす。

(あぁ、おなか空いた。解散したらなにか食べて帰ろう)

 せっかくのパーティー料理を堪能せず帰りがけにラーメン屋や定食屋に寄る。MRにはあるあるネタのひとつだ。

「やぁ」
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