恋人同盟〜モテる二人のこじらせ恋愛事情〜【書籍化】
ランタンフェスティバル
(明日の天気予報は……)

自宅マンションでドキドキしながら、めぐはスマートフォンの週間天気予報を確認する。

8月10日の欄に目を落とし、おひさまのマークを確認するとガッツポーズをした。

「やったー、晴天!風も弱いしコンディションはバッチリ!気温は高いけど、テンションも高い!いえーい!」

一人で盛り上がってから、支度を整えて会社へと向かう。
いよいよ明日は8月10日。
ランタンフェスティバルの初日、そして弦の誕生日でもあった。

(今日はフェスティバルの準備でみんな大忙しだよね。私もお手伝いに行こう。あとは氷室くんに確かめなきゃ。好きな人が出来たかどうか)

気がはやってソワソワするが、落ち着けと自分に言い聞かせた。

出社すると、弦と一緒に今日のスケジュールを確認する。

「ランタンフェスティバルの準備の様子もSNSに載せたいのよね。今日、スタッフが実際にランタンを作ってみることになってるでしょ?その様子を取材させてもらおうよ」
「そうだな。じゃあ、夕方になったらキャナルガーデンに行こう」
「うん。それまでに他の仕事片付けちゃうね」

いつにも増して集中して仕事をこなし、陽が傾き始めた頃にようやくひと段落ついた。

「氷室くん、お待たせ。行けそう?」
「ああ、大丈夫。行こうか」

二人で資料を手に立ち上がり、キャナルガーデンへと向かう。
ヨーロッパの街並みを、運河を見ながら通り抜けると、終着点のガーデンには特設テントが設営されていた。
企画課のスタッフがテーブルを広げたり、ヘリウムガスのボンベを並べたりと準備に追われている。
めぐと弦は顔なじみのスタッフを見つけて声をかけた。

「お疲れ様です。何かお手伝い出来ることありますか?」
「あ、雪村さんに氷室さん。ちょど良かった。一緒にランタンを作ってみてもらえますか?明日の予行演習を兼ねて、運河の水面に浮かべるランタンをたくさん用意しなくちゃいけなくて」
「はい、分かりました」

めぐはわくわくしながらゲスト側としてレクチャーを受ける。
まずは膨らませる前のランタンに、ペンで好きなイラストや言葉を書いていく。
めぐはグレイスフル ワールドのロゴマークを描き『いいお天気が続きますように』と言葉を添えた。

「そしたら一旦お預かりして、ガスを入れますね。えーっと、確かこの吹き口に先端を入れて……」

スタッフが慎重にガスを充填させると、ランタンはふっくらと大きく膨らんだ。

「吹き口に封をして、LEDライトと糸をテープで固定したら……、はい!完成です」

わあ!とめぐは笑顔でランタンを受け取る。

「手を離したらスーッと浮いちゃいますので、リリースの合図があるまではしっかり持っていてくださいね。もし離しちゃっても、この持ち手は重りになっているので地面に落ちて来ます。そこから糸を手繰り寄せれば大丈夫ですから……っていうご説明で分かるかな?」
「はい、よく分かります」
「良かった!そしたら雪村さん、ランタンはあそこのネットの中に入れておいてくださいね。明日、運河に浮かべます」
「分かりました。明日とっても楽しみです」

そのあともランタン作りを手伝い、取材用に写真を何枚か撮影すると、めぐと弦は事務所に戻ってSNSを更新する。

「もう明日が楽しみ過ぎて眠れそうにないよ」
「ははっ!遠足前の小学生みたいだな、めぐ」
「うん。本当にそんな気分」
「じゃあ、おやつでも買って帰りますか?」
「ふふっ、300円までね」

そんな会話をしながら帰路についた。
< 38 / 144 >

この作品をシェア

pagetop