恋人同盟〜モテる二人のこじらせ恋愛事情〜【書籍化】
(うーん、どうしたもんか……)

自宅に帰っためぐは、長谷部から渡された封筒を開けて考え込む。
中に入っていたチケットには、クリスマス ロビーコンサートと書かれていた。
ホテルのロビーの中央にある大階段で聖歌隊がクリスマスキャロルを歌うコンサートで、50席ほどの客席を設けるらしかった。

(聴きに行きたいなあ、素敵だろうなあ、でもなあ……)

長谷部の顔がどうしても思い返される。
あの怪我をした時から2ヶ月が経ち、その間長谷部と会うことはなかった。
弦との関係に悩んでいたことと日々の仕事が忙しかったこともあり、正直に言うと長谷部のことを思い出すこともなかった。

(だけど長谷部さん、待っててくれたんだな。私の気持ちが落ち着くのをずっと)

とても誠実で優しい人だと思う。
けれど、それ以上にどうこうと考えたことはない。
7本のバラを贈られたら?
「ずっとあなたが好きだった」
そう言われたら?

今の自分ではきっと戸惑いが大きいだろう。
何も返事が出来ないに違いない。

(いや、まだ何も言われてないうちから悩むのは変だよね。うん、そうだよ。なんか告白を期待してるみたい。そんなことないから)

そう思い直し、もう一度チケットを手に取った。

(予定が入らなければ行こう。だって行きたいもん)

心を決めて、チケットを封筒に戻した。
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