君の心に触れる時

再び



春香は、ゆっくりと目を開けた。最初に見たのは、白い天井、そしてその横に座っている蓮の姿だった。彼の顔に浮かぶ緊張と安堵の入り混じった表情が、春香の胸に深く響く。

「蓮…?」

微かに声を発し、蓮が瞬時に顔を上げる。

「春香…お前、目を覚ましたのか?」

蓮は声を震わせながら、春香の手を握りしめる。その手は温かく、力強い。春香はその感触に、胸が締め付けられるような感覚を覚えた。

「蓮…ごめんなさい。私、どうしてこんなことに…」

涙がこぼれる。彼に迷惑をかけたこと、そしてどれだけ彼に支えてもらったかを思うと、心が痛んでたまらなかった。

蓮は驚きながらも、静かに首を振った。

「春香、俺はお前に迷惑なんかかけられてない。お前が生きててくれるだけで、俺は何もいらない。だから、もう謝る必要なんてない。」

その言葉に、春香は目を閉じて、彼の手のひらをそっと握り返した。心の中で、彼の言葉を信じたかった。けれど、どうしても心の奥底にある恐れや不安が消えなかった。

「でも、私は…どうしても、あなたに頼れない。あなたが心配するから、私は…」

蓮は静かに春香を見つめ、少しだけ息を吐いてから言った。

「頼らなくていいってことはないよ。お前がどんなに俺を拒んでも、俺はお前を守るって決めたんだ。」

春香の目には再び涙が浮かんだ。彼の気持ちが痛いほど伝わってきた。けれど、どうしても素直になれない自分に、苛立ちと悔しさが交錯する。

「どうして、そんなふうに言ってくれるの…?」

蓮は苦しそうに息を吐き出し、静かに答える。

「だって、俺が医者としての立場を超えて、お前の支えになりたかったからだよ。」

その言葉を聞いて、春香は目を閉じ、静かに涙を流した。あの時の自分を思い出して、どうしてもその優しさを受け入れられなかった自分を悔いた。
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