君の心に触れる時
手術室の中、医療チームは時間との戦いを続けていた。
春香の心拍はいつ止まってもおかしくない状態だったが、少しずつ安定してきた兆候が現れ始める。

「心臓リズムが戻りつつある!今がチャンスだ!」

そして、帝王切開が進められた。
産声が響くのは奇跡のように思えた。だが、春香の意識はまだ戻らない。




数時間後、集中治療室から出てきた智己は、疲れ果てた表情で蓮に告げる。

「赤ちゃんは無事だ。春香も…なんとか持ち直した。ただし、心臓の状態は予断を許さない。」

蓮は崩れるように椅子に座り込み、胸にこみ上げる安堵と不安に涙を流した。



数週間後、春香は病室のベッドでゆっくりと目を開けた。目の前には、泣きはらしたような顔で赤ちゃんを抱く蓮がいた。

「春香…よかった…!」 

蓮の声を聞いた瞬間、春香は涙を流しながら微笑んだ。
「蓮…この子…私たちの…?」

蓮は赤ちゃんを優しく春香に抱かせた。小さな命の重みを感じた春香は、蓮の手を握りしめた。

「ありがとう…生きていてよかった…」

「ありがとう…ありがとう、智己…」

廊下には、春香と赤ちゃんを救うために全力を尽くした人々の疲労と静かな感動が漂っていた。
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