だから私は、世界滅亡に青春を捧げた
プロローグ

 卒業式を翌日に控えた日の放課後、誰もいなくなった教室で机に向かい、真剣な表情で紙を一枚ずつめくる私の親友。
 そんな彼女を私はただじっと見つめ、待っていた。そして、どれくらいの時間が経ったのか、彼女はゆっくりと顔をあげる。

「なんか、らしくないね。荒削りというか」
「私もそう思う」
「あと、なんか設定詰め込み過ぎじゃない?」
「私もそう思う」
「でも、それがお兄っぽい感じもする」
「それは、よかった……」

 この小説を一番に読んでもらうのは彼女にしようと決めていた。彼女に読んでもらわなければいけなかった。この小説を書いてなにか意味があるのかと言われたらわからない。ただの自己満足かもしれない。でも、書かずにはいられなかった。書かなければいけないと思った。

 少し会話をし、最後は『面白かったよ』と言う彼女の言葉にそれ以上求めることはせず、コピーして閉じただけの小説を受け取る。
 そして二人で教室を出ると、私は部室へと向かう。彼女はそのまま帰ると言い、途中で別れた。
 もう、だれもいない文芸部のドアを開く。長机とパイプ椅子、何も並んでいない本棚だけがある、綺麗に片付けられた部屋。春からは違う部活の部室になるらしい。二年間、文芸部は私ただ一人だった。本来なら三人以上の部員がいなければ廃部だが、先生や周りの人たちが私に気をつかい、私が卒業するまでの間誰も廃部なんて言葉は口にしなかった。それがありがたくもあり、腫れ物扱いされているようで居心地の悪さを感じることもあった。

 それでも私は先輩との約束を果たしたかった。

 先輩、完成しましたよ。先輩の書きたかった物語。納得してもらえるかはわからないけど、私はそのために三年間の高校生活を、青春を、全て捧げました。

 世界滅亡を創りあげるために――。

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