鉄仮面の自衛官ドクターは男嫌いの契約妻にだけ激甘になる【自衛官シリーズ】
 悠生さんの視線が私からその隣へ移る。彼は私たちが下の名前で呼び合うところから知り合いだと悟ったらしく、悠生さんに目礼をしてその場を立ち去った。

「どうかしましたか?」

「もう完全にトラウマを克服したんだな」

 つぶやくように言った悠生さんの表情は硬いままだ。もしかしたらずっと働き詰めで疲れているのかもしれない。

「これも悠生さんのおかげです。またこうして現場で働けるようになるとは思いませんでした」

「……俺は君の力になれていたのか」

「もちろんです。むしろ支えてもらってばかりで……。なにもできていなかったのが申し訳ないです」

「なんの冗談だ。君がなにもできていないなんて」

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