鉄仮面の自衛官ドクターは男嫌いの契約妻にだけ激甘になる【自衛官シリーズ】
 だけど、振り返った私と目が合ってすぐに手を放した。

「無理をするなよ」

「それ、さっきも言いましたよ」

「あー……そうだったか」

「二回言うってことはよっぽどなんですね。気をつけます」

 くすくす笑いながら悠生さんのもとを離れ、触れた指先を胸に寄せる。

 ほんの少し言葉を交わしただけでもうれしかったのに、彼のぬくもりまで感じることができた。十分にも満たない短いひと時がこんなにも元気をくれるなんて思わず、胸の奥に温かな想いが宿る。

 この後も頑張ろう。

 声には出さず唇を動かし、再び私は現場へと戻った。その先で同じボランティアスタッフのひとりに話しかけられる。

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