鉄仮面の自衛官ドクターは男嫌いの契約妻にだけ激甘になる【自衛官シリーズ】
 彼の顔もまた泥や砂埃で汚れていた。それを丁寧に拭い、ほっと息を吐く。

「これで大丈夫です」

「貸してくれれば自分でやったのに」

「それを言うなら悠生さんだってそうですよ。言ってくれたら、手を汚させずに済みました」

 汚れた部位を内側に折り込み、ハンカチを元通りにしまう。

 そうしながら時計を確認すると、もう休憩時間が終わりそうだった。

「そろそろ戻らなきゃ」

「ああ、俺も戻る。無理はしないようにな」

「はい。悠生さんも」

 そう言って立ち去る直前、後ろから手を引っ張られた。

 びっくりして振り返ると、悠生さんが私の指に自分の指を絡めて引き留めている。

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