鉄仮面の自衛官ドクターは男嫌いの契約妻にだけ激甘になる【自衛官シリーズ】
 なにかがひとつ違えば、私たちはお互いを疑っていたかもしれないけれど、奇跡的にピースが噛み合ったおかげでそうはならなかった。

「お疲れ様でした」

「ああ、君も」

 悠生さんが私に手を差し出した。

 今はなんの抵抗もなく触れられる手を取り、並んで歩き出す。

 亜香里さんを思うと胸が痛んだけれど、それ以上に安堵の気持ちが強い。

「これでなんの心配もせずに夫婦でいられますね」

「いや、まだだ」

「え?」

 思わぬ返答に足を止めてしまう。

 悠生さんは私を見下ろし、苦い顔で言った。

「両親の説得が残っている」 
< 315 / 337 >

この作品をシェア

pagetop