憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
「七星と別れたあとも、俺はなにがあってもこの指環を外さない。
俺の妻は生涯、七星ひとりだ」

なにかしゃべると涙が落ちそうで、無言でうん、うんと頷いた。

「ごめんな、初カレがこんな重い男で」

困ったように笑う彼に、ううんと首を横に振った。
私を生涯、幸せにできないのがわかっているから今、こうやって精一杯、甘やかせて愛してくれる。
それだけで十分だった。

「あっ、そうだ」

少し気持ちも落ち着き、バッグの中からごそごそと今日買ったネクタイの包みを取り出した。

「指環のお返しじゃないですけど。
って、中身はもう、わかってますけどね」

なんだか改まって渡すのは照れくさく、笑って誤魔化しながら差し出す。

「ありがとう、嬉しい」

目を細めて空気に溶けるようにふんわりと、本当に嬉しそうに彼が笑う。
本日二回目、ずきゅんと心臓が射貫かれて胸が苦しくなった。
前から素の笑顔はヤバいと思っていたが、完全に気が抜けているときの笑顔はさらにヤバい。
なにがヤバいってそれだけで私はキュン死しそうなので、ほどほどにしていただきたい。
とはいえ、無意識だろうから私が慣れるしかないのか……。

食事のあとはあっさりホテルを出てタクシーに乗った。
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