憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
しかも夜中にマンションのベランダに忍び込んでそういう行為に耽っていたらしく、ぞっとした。
本当、よく無事でいられたと思う。
しかも彼の父親はそれなりに名の通った中小企業で重役をしており、生活費をみていたようだ。
私の引っ越し先は断腸の思いで会社へ行き、つけて帰って知ったそうだ。
最寄り駅とマンション周辺でしか見かけていないので職場は知らないと思っていたが、私がKAGETSUDOUの井ノ上七星というのは知っていたらしい。
ただ、会社周辺に行かなかったのは、万が一にも自分の職場の人間に会いたくなかったからだという。

彼が私と付き合っていると思い至った理由も、職場で上司に罵られて暴力を振るわれて倒れた際、優しく手を貸して慰めてくれたから……らしい。
それを聞いて必死に記憶をたどった結果、そういえば緑淡舎さんを訪れた際、目の前で凄い勢いでこけた人がいて、大丈夫ですかと手を貸してあげた出来事があったなと思い出した。
どうも、それが市崎だったらしい。
人として当たり前の行為をして、そんなふうに思い込まれるなんて本当に恐ろしい。
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