拝啓、あしながおじさん。 ~令和日本のジュディ・アボットより~ 【改稿版】
 一緒に過ごした一時間が楽しすぎて、帰るのが名残惜しいくらいだった。ホントはエントランスまで見送りに来てくれた時にキスしてほしかったけど……。
 タクシーの窓を開けて手を振り返した時、わたしはなぜかわかば園を巣立った日のことを思い出したの。あの時に手を振り返した相手は園長先生とか弟妹たちだったけど、今度はホントに家族になる人なんだって思うと何か感慨深かった。
 またあなたのお部屋に遊びに行くね。今度はあなたの好きなチョコレートケーキでも買っていこうかな。久留島さんと三人で、あなたの淹れてくれた美味しい紅茶と一緒に食べたいな。
 夏休みは、千藤農園で何をして遊ぼうか? またあの山に登る? また渓流釣りにも連れて行ってね。あと、バイクでツーリングもいいな。それからキャッチボールも。今度はちゃんと熱中症対策もしてからやろうね。雨の日には一緒に読書をして、わたしはあなたが本を読んでる横で執筆の仕事をするの。多分、編集者さんがもうすぐ新しい仕事を依頼してきそうだから……。
 夜は一緒に星空観測かな。またホタルを見に行ってもいいよね。わたしの両親に、あなたと結婚することを報告したいから。他にも一緒にやりたいことがいーーっぱいありすぎて、ここには書ききれない!
 夏休みが始まる日は、純也さんが寮の前まで迎えに来てね。あの車にバイクもちゃんと積んで。
 それから、またあの左手で書いた個性的な字の手紙も送ってほしいな。でも、さすがに長文は書くの難しいかな?
 それじゃあまたね、純也さん。わたしはあなたのことが、これからもずっとずっと、ずーーーーっと大好きだよ!!

六月二十六日   令和日本のジュディ・アボットこと相川愛美より

P.S.   そういえばこれ、わたしが初めて書いたラブレターだ。ジュディもそうだったけど、どうして書き方知ってたんだろう? なんか不思議だよね。』


                     ……おわり
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