音楽的秘想(Xmas短編集)

♪冬の歩道で

 あまりにもストレートな感情の連続に、耐えきれずに立ち上がっていた。「清家(せいけ)先生どうしたんですか?」と言った隣に座るお局教師には耳を貸さず、俺は冷えきった体育館から、更に温度の下がった屋外へと足を急がせた。

 あいつらの素直すぎる気持ちの数々に、まるで嘲笑われているかのようだった。最後の曲が終わったから席を立ったのだと見せかけて、俺は逃げたのだ。

 ──あの中に居たら、自分の愚かさが露呈してしまう気がしたから。



「わぁ!雪だよ!!」

「お、ホワイトクリスマスだな。」



 幸せそうなカップルの声でふと顔を上げれば、いつの間に降り出したのか小雪が舞っていた。微小な欠片が一つ、また一つと、俺の瞼やら頬やらに落ちてくる。ひらりと肩に乗ったそれは、すぐに溶けて跡形もなく消え去っていった。あの日、俺の日常から姿を消したあいつのように。

 あぁ、本当だったら俺も今頃、あいつとこうやって笑ってたのに。先程のカップルを見ていた自分が脳内でピンク色の妄想をしていることに気付き、思わず自嘲の笑みをこぼした。

 ──叶わないものは叶わないと分かっているから。だから大人は、悲しくて寂しいんだと思う。
< 28 / 40 >

この作品をシェア

pagetop