March〜さよならじゃない〜
「賢治、離してよ!!」

手を振り解こうとするものの、賢治は決して離さなかった。やがて顎を掴まれて無理やり賢治の方を向かされる。

賢治の陶器のように白い肌、ダークブラウンの二重の目、首筋のほくろ、全てをはっきりと見てしまった。その瞬間、絵菜の目から涙が溢れていく。

「……だから、見たくなかったのに……」

絵菜は片方の手で涙を拭う。一度溢れた感情は止まることを知らない。すると教室に凛とした声が響いた。

「好きだ」

時間が止まったような気がした。賢治の気持ちをわかっていたはずなのに、絵菜は驚いてしまう。賢治は真剣な顔をして言った。

「俺、絶対に日本に帰ってくる。絶対にまた会える。だから永遠の別れみたいな顔すんな。……返事、聞かせてくんね?」

春は出会いと別れの季節だ。そして恋の芽が花を咲かせる季節でもある。絵菜は口を開いた。
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