世界はそれを愛と呼ぶ
☪︎


「あっ、沙耶可愛い〜!」

呼ばれて、マンションのエントランスに降りてくると、既に集まっていた桜が褒めてくれた。

「それ、この間のだよね!やっぱり似合ってる!可愛い!」

きらきらふわふわ、白やピンクがとても良く似合うお姫様のような女の子。
今日は涼しげな薄ピンク色のワンピースに、白のカーディガンを羽織り、足元は可愛いローヒール。

「桜も可愛い。よく似合ってる」

「えへへ〜!ありがとう!」

感情豊かで、婚約者にとても愛されていて。

『助けてくれてっ、ありがと』

あのショッピングの日、そうやって泣きながら感謝された時、自分の気紛れ行動が、彼女を発見できるきっかけになって良かったと心から思った。

「今日、茉白と昼からの予定あるんだよね?」

「うん。やっと、車椅子から解放らしくて」

「リハビリは?」

「家で、慧さんとやってたみたいだよ」

「そうなんだ!頑張ったんだね〜!」

そう言う桜も発見時、四肢に力が入らなかった。
長い間、自分で動いた覚えがないというから、足の筋肉は勿論、ほとんどの筋力が落ちていて、彼女は酷く苦労したと聞いた。

「桜、沙耶〜!」

のほほんと談笑していると、エントランスに入ってくる、ふたつの影。

「澪、相模、おはよ〜!」

元気よく手を振って、挨拶をする桜。

「おはよう、澪」

沙耶も桜に倣って挨拶すると、「おはよう!」と元気に返したあと、「沙耶には改めて紹介するね!」と、隣の男性を押し出してきた。

長い髪を緩く結び、肩から流している優美で中性的な男性─……彼は澪に押され、軽く会釈する。

「改めまして、焔棠家に代々お仕えしている千羽(センバ)家当主、千羽暁仁(アキヒト)が第一子、千羽相模と申します。薫の側近兼側仕えで、澪の夫です」

物腰柔らかく、優しそうな風貌。
澪と並ぶと、かなりの身長差があって。

「自慢の旦那様です」

にこーっと幸せそうな澪。愛の形。とても素敵な夫婦。

「こちらこそ、改めまして。黒橋沙耶です。沙耶と呼んでください」

「では、こちらも名前でお願いします」

「分かりました。─問題なければ、敬語を抜いても?」

「もちろん」

即応力が尋常じゃない彼は流石と言うべきか。

「よろしく」

と、軽く握手を交わすと、

「ついでに、弟も紹介する」

と、相模が言った。


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