世界はそれを愛と呼ぶ
「まぁ、運命に縛られすぎているっていうのは、同意。そういう風にしか生きられないことを受け入れた上で、役目を果たしている京子さんは格好良いけど」
「京子さんねぇ……他四人がそれなりに自由に過ごせているの、京子さんのおかげだもんね」
「千華さんが家出して、和子さんが亡くなったあの日から、京子さんが伝統文化を支えているようなものだもの。相馬は廃止しようかと考えていたみたいだけど、自分で千年の歴史に幕が降りるのは耐えられないらしくて」
「そんなことより、京子さんの人生の方が大事なのに」
「相馬も言ってた。姉さんを支え、動かしているのは、あの日、和子さんの惨劇を見たことによる覚悟だけだって。だから、危険性があるんだけど……」
はあ、と、ため息をつくふたり。
京子さんは、相馬のお姉さん。
そういえば、相馬が逆らえないとか何とか……多分、凄く真面目で優しい人なのだろう。
「……相馬に子供が産まれて、その子が女の子だったら、その重圧?は分散されるのかな」
おやつのクッキーを齧りながら、沙耶は呟いた。
今日のお弁当は、春ちゃんの手作り。
彩りが良く、可愛いお弁当は栄養満点で、いつも何かしらのお菓子がついている。
あまりにもご飯をたべないということで、高校に入ってからは殆ど毎日、お弁当を持たされているが、栄養があるものを少しでも食べるように、高カロリーを少しでも摂取するように、という思いから、お弁当の中身自体は少なめだけど、お菓子をつけたりなどで調整してくれている。
それは愛がなくては出来ないことだと、湊に言われ、自分は本当に大切に、愛されて育ってきたんだと再実感し、最近は自分を大切にしようと頑張っているところ。
「まあ、そうかもね。京子さんも相馬も、間違いなく、本人の意志を尊重すると思うけど」
「言ってることは間違ってないよ。少なくとも、相馬の子供は間違いなく、能力的には強い子供が産まれてくるからね」
「そうだよね〜」
ふと、相馬の女性バージョンを想像してみる。
相馬は長髪だから、身長さえもう少し縮めば、女版相馬も想像しやすい……う〜ん、超美少女。
呑気にそんなことを考えながら、お菓子を食べ進めていると、
「一応、言っておくけど……相馬の子どもってことは、沙耶が産むんだからね?」
と、桜に言われた。
「…………へ?」
「何で、そんな無関係みたいな顔をしてるのよ。相馬の子供、沙耶以外の誰が産むの」
呆れたように笑われるけど、全然考えていなかったことで、一気に顔が熱を持った。
「わ、真っ赤……」
「か、考えて、なくて……」
そうか。婚約者はもう、名ばかりじゃないんだった。
ちゃんと、恋人、というか、本当の、婚約者……。
「……沙耶、相馬の溺愛を真っ直ぐから受け止めてるから、平気かと。桜と同じタイプかと」
「や、その、照れるとか、それより前に甘やかされて有耶無耶にされることが多くて……っ?」
「混乱してる〜可愛いっ。あ、一応言っておくけど、薫のは幼い頃からずっとだし、真っ直ぐすぎるというか、私以外の扱いが酷すぎて疑う余地もないというか?恥ずかしいと思う時間を超えただけだからね」
「え、訂正するのそこ……?まぁいいんだけど」
両頬に触れると、本当に熱い。
熱すぎてどうしよう……なんて思っていると。