世界はそれを愛と呼ぶ



「変なことじゃないよ、ねぇ?」

「(こくこく)」

「俺が呼び出された理由とかを話しながら、彼女の身の上について話をしていただけ。彼女があまりにも申し訳なさそうにするから、こうやって手を繋いでるの。─え?その話は終わったことでしょ?申し訳ないとか、思わなくていいから」

一言も発してない真姫に、微笑む蒼生さん。

「見たらわかるだろうけど、楪家の、蒼生の能力はね、触れたら、相手の心がわかる能力なの。だから、薫は最適だと思ったんだろうね……考えていれば、少しでも真姫の中にあれば、それを蒼生が感じ取れるから。でも、それは真姫のプライバシー侵害にあたると思うんだけど」

「桜の言う通りだよ、蒼生。薫にとっては、桜がいちばん大事。相馬にとっては、沙耶がいちばん大事。その気持ちはわかるけど、真姫もちゃんとひとりの人間なんだよ?薫はともかく、相馬はそういうの許可しないんじゃないの?したの?」

蒼生さんに詰め寄る桜と澪を見て、真姫が慌てている。
何を言っているか把握出来なくても、場面的に察したのだろう。

片手を全力で振って、二人を止める仕草をする姿は不謹慎かもしれないけど、可愛くて。
それに気づいた桜達が口を噤むと、「君を利用するなって、怒られてるの」なんて、彼が真姫にわかるようにゆっくりと、口の動きがわかるように伝えるから。

真姫は首を横に振って、声にならない声で「大丈夫」。

「……本人の許可を貰ってからじゃないと、絶対にしないよ。俺だって、嫌な感情を聞きたくないし。嫌なら振り払ってと伝えているし、何より、俺は楪家の中で、いちばん能力が強く生まれてきちゃった側。“聞く”だけじゃないよ、“聞かせる”こともできるから」

蒼生の言葉と、真姫の必死さを見て、引き下がる2人。
蒼生さんから手を離し、真姫は二人の手を握ると、にこっと笑った。

「……蒼生、絶対守り抜きなさいよ」

「じゃなかったら、おじいちゃんにチクるから」

真姫の可愛らしさに初日からメロメロらしいふたりが、蒼生さんを睨む。

蒼生さんはおっかないという顔をしながら、沙耶と柚香の前に来る。

「初めまして」

座ったままの沙耶と柚香の前にしゃがみこんだ彼。

「黙って、会釈だけだった貴方も、ふたりの前だと喋らざるを得ないのね」

柚香は笑いながら、唐揚げを食べる。

「基本、喋りたくないけど……喋らない方が面倒臭い」

「幼なじみの距離感ね。ところで、面倒臭いだけ?」

「え?」

「話したくない、の」

にこっと微笑む姿は、有無を言わさぬ生徒会長。
流石、入学してすぐから任命されているだけある威圧感。レン……理事長が気にいるのも、無理ない性格。

「いや……話したけど、能力持ちで」

「うん」

「普通、ひとつなんだけど……俺はたまたま、全部使える側の人間で。たまに産まれてくるらしいけど、そのせいで色々と面倒臭い思いもしてきたわけ」

ダルそうな雰囲気からして、本当に面倒くさい目にあってきたんだろうなぁ、と、眺めていると。

「触れたら、心が読める?」

柚香が躊躇いもなく、手を出す。
それを見て、蒼生さんは目を瞬かせたあと、柚香の手を取った。

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