世界はそれを愛と呼ぶ

第9節 本音

☪︎


─沙耶達が、御園家へ向かって3日。

「行ってきます〜!」

そう言って笑った小さな街の子どもの頭を撫でて、

「行ってらっしゃい」

と、健斗は複数の家族を見送った。

「……あと少しだよね、健斗さん」

大樹に後ろから声をかけられ、健斗は頷く。

専用の、御園家によって用意された車に乗り込んだ、街に住む家族たちは、かつての悲劇を繰り返さぬため、人数点呼や同意の元、国中にある御園家のホテルなどに避難してもらった。

勿論、名目は【旅行】であり、街から旅行へ向かってるのは複数の家族だけ。
だが、実態は街中にいる、百を超える世帯に避難してもらっている。

不審がられることがないよう、御園家を始めとする方々にもご協力頂き、家主の許可の元、その家の人間の振りをして、在宅をアピールする。

また、彼らが避難途中で、車の中を見られても問題がないよう、沢山の荷物が載っている車に見せるため、車は御園家が急遽用意した特注品。

見た目は全然違う車種で、途中で車内検査を受けても問題がないように、徹底的に対策されている。

また、周辺の黒橋が所有する街ではない街の人々にも、【映画の撮影で騒音などご迷惑をお掛けする可能性】をお伝えし、警察の方には上部の人々にだけ、相馬が話を通したらしい。

おかげで、車内検査に引っかかっても、それが正規のものか、奴らの罠か分かるようになっている。

沙耶から電話があったのは、三日前。
自分の身の安全性や、現在地と共に、この街で行うことを話してくれた。

それは、相馬と向かう途中に話した内容らしく、今回の避難もその一貫であり、その話をした翌朝には、特注車を用意した上で、警察にも話を通しているのだから、本当に頭が下がる。

「……うん、健斗様、街中は問題なさそうです」

「そうですか、ありがとうございます。夜雨さん」

彼女は、相馬が派遣した御園家の、相馬の部下。
周囲には伝えていないし、見た目は普通の年頃の女性だが、中身は100歳に近い、鬼だという。

彼女は結界を自分自身に張り、街中に残る悪意の根源などを見つけてくれている。

「フフッ、相馬様の大切な方のお父様ですもの。この命に代えても、必ず、お守りいたしますわ」

そう言った彼女は、この3日間で既に十数名のスパイと思われる人を捕まえては、徹底的に追い込み、人間的にはギリギリのラインまで責め立てた。

全ての情報を吐かせる、一言で言えば、拷問部門はこの街の、黒宮家にもいるのだが、彼女は『すぐに終わりますから』と、微笑んで、あっという間に片してしまった。

そんな彼らの身柄は放流しておくのは危険性があるとして、彼女の故郷たる【鬼の郷】に送られたらしい。
許せる相手ではないが、少し同情はした。

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