世界はそれを愛と呼ぶ
「夜雨様!」
「あら、なあに?」
─相馬が派遣してくれたのは、何も彼女だけではない。
彼女の血縁であるという、二十数名がここにいる。
『この子が私の子で、向こうの子が、私の玄孫です。人間基準で言うと!』
と、彼女は笑っていた。
どうやら、鬼の子は3ヶ月ほどで、人間で言う5歳児くらいまでに成長するらしく、郷の方には玄孫の孫もいるらしいから、人間の常識では、彼らは測れない。
「廃墟、無人確認しました」
「ご苦労様」
「花も仕掛けました!」
「早かったわね?」
「ガスもあるので、連鎖しますよ〜!」
「あらあら。どれくらいの範囲?結界を張らなきゃ」
「時折、現れていた金髪の少女に関しては、別の者が追ってます。下の地下道から……」
「そうなの?わかるのかしら」
「父によると、そこを使ったものはその2名だけだから、気配でわかるとか!」
「あらぁ、やっぱり、あの子は優秀ねぇ」
……見た目がまだ10歳くらいの子もノリノリで、夜雨さんに話し掛けている。
それが彼らの当たり前の世界、人外の世界。
その世界と血を分けた存在が御園家。
知ってはいたが、実際に目にすると、不思議なものだ。
もっとも、今回はそんな不思議な彼らに全てを守ってもらうことになるのだから、健斗は本当に足を向けられない。
「……健斗さん、俺達は普通に生活するんだよな?」
「ああ。沙耶はそう言っていた。……あの子、最近、相馬のおかげで前向きになったというか、強くなっているよ。もしもの時は、【武器】を使うって言われた」
「沙耶が!?」
「そう。あの沙耶が」
「びっくりだけど……少しは、自分を責め続ける必要はない、怒るだけの、憎むだけの権利はあると、自覚してくれたのかな」
「どうだろうな。まぁ、会ったら、聞けばいいさ」
相馬の存在で、俯いてばかりだったあの子は前を向くようになった。
互いを支え合う存在となっていっているのだろう。
少し、親の手を離すのが早い気もするが、自分のような人間の元に生まれてきてくれたこと自体が奇跡。
あの子がそれを幸せだと呼び、幸せを望むのなら、その幸せを手にした時、せめて味方でいてあげたい。
「にしても、沙耶、三年通う高校、まだ合計1ヶ月弱くらいしか通ってないけど」
「あー……」
「まぁ、成績的には問題ないらしいから、あと少し、足りない単位を取るだけで済むんだろうけどさ」
「緩いよなぁ」
「学校に言ってなかった健斗さんの意見の元、学校嫌いだった理事長が作ったからね」
「……」
大樹の真っ直ぐな言葉に何も言えない。
「……柚香たちは避難したのか?」
わざと話を逸らすように言うと、大樹は笑いながら、
「ああ。陽向さん達が向こうに帰った翌日、真姫も、柚香も全員、向こうへ移動したらしい。パーティとやらもあるからな、丁度良いタイミングといえば、丁度良いタイミングだと」
「まあ、……いつ、彼らはこの街に帰ってこれるかな」
「心配?」
「そりゃあな」
「……大丈夫だよ、彼らは」
大樹は腕を天に向かってあげ、身体を伸ばしながら。