世界はそれを愛と呼ぶ
☪︎
「─……」
足元が歪んで、溶けた。
ぱしゃり、と、水の弾ける音がして、目を開けると、どこまでも続く水の上に座る自分……少し薄暗くて、空を見上げれば、満月が輝いている。
「─おはよう」
声を掛けられて振り向くと、鮮やかな着物を身につけた女の人が立っていた。
美しく、儚い雰囲気の……月明かりに溶けてしまいそうな彼女は、「私はね、神夜(かぐや)」と、名乗った。
キラキラと輝く、お月様みたいな金髪。
鮮やかな着物は、まるで本物の”かぐや姫”のよう。
「……此処は?」
「ここはねぇ、深淵」
「深淵?」
「そうなの。御園家の深淵。ここに踏み込めるのは、ごく一部」
そう言ってニコニコ笑う神夜は、桜を見上げる。
「私に、何の用事?」
「え〜?あなたが、”教えて”と言ったんじゃない」
「……」
確かに言ったけど、まさかこんな空間が存在しているなんて思わなかったから、沙耶は戸惑いを隠せない。
そんな沙耶を気にすることなく、
「あら、既に帝と契約を交わしているのねぇ……」
と、優しい笑みを浮かべる神夜は、
「私ね、貴方と御園のお話をね、したかったの」
桜の花に触れながら、
「あの家に嫁ぐということはね、全てを理解しなければならない。でも、嫁いだあとはきっと逃げられないでしょう。私はね、知ることを拒絶したの。結末は悲惨だった」
泣いているように見える顔で、微笑んだ。
「だからね、貴女はそんな後悔しないで」
「後悔?」
「うん。……本当はね、私が育ててあげたかった。私が守ってあげたかったの。私にそんな資格はなくても、それでも、彼の子どもを産みたかったの」
彼女は沙耶に近付くと、沙耶の両頬を包み込んで、額を合わせてきた。
どうやら、後悔の話は教えてくれないらしい。
「待ち望んだ、貴女。どうか、私の愛する人を導いて」
─……何も説明がなかった。優しく囁かれた。
そのまま、沙耶は神夜の額から感じた一瞬の暖かさを実感するより先に、すぐに意識を手放した。
「─……」
足元が歪んで、溶けた。
ぱしゃり、と、水の弾ける音がして、目を開けると、どこまでも続く水の上に座る自分……少し薄暗くて、空を見上げれば、満月が輝いている。
「─おはよう」
声を掛けられて振り向くと、鮮やかな着物を身につけた女の人が立っていた。
美しく、儚い雰囲気の……月明かりに溶けてしまいそうな彼女は、「私はね、神夜(かぐや)」と、名乗った。
キラキラと輝く、お月様みたいな金髪。
鮮やかな着物は、まるで本物の”かぐや姫”のよう。
「……此処は?」
「ここはねぇ、深淵」
「深淵?」
「そうなの。御園家の深淵。ここに踏み込めるのは、ごく一部」
そう言ってニコニコ笑う神夜は、桜を見上げる。
「私に、何の用事?」
「え〜?あなたが、”教えて”と言ったんじゃない」
「……」
確かに言ったけど、まさかこんな空間が存在しているなんて思わなかったから、沙耶は戸惑いを隠せない。
そんな沙耶を気にすることなく、
「あら、既に帝と契約を交わしているのねぇ……」
と、優しい笑みを浮かべる神夜は、
「私ね、貴方と御園のお話をね、したかったの」
桜の花に触れながら、
「あの家に嫁ぐということはね、全てを理解しなければならない。でも、嫁いだあとはきっと逃げられないでしょう。私はね、知ることを拒絶したの。結末は悲惨だった」
泣いているように見える顔で、微笑んだ。
「だからね、貴女はそんな後悔しないで」
「後悔?」
「うん。……本当はね、私が育ててあげたかった。私が守ってあげたかったの。私にそんな資格はなくても、それでも、彼の子どもを産みたかったの」
彼女は沙耶に近付くと、沙耶の両頬を包み込んで、額を合わせてきた。
どうやら、後悔の話は教えてくれないらしい。
「待ち望んだ、貴女。どうか、私の愛する人を導いて」
─……何も説明がなかった。優しく囁かれた。
そのまま、沙耶は神夜の額から感じた一瞬の暖かさを実感するより先に、すぐに意識を手放した。