世界はそれを愛と呼ぶ
「─え、というか、この流れ、俺も番見つけなきゃ死ねないってこと?」
「そりゃ分からんが。見つけようと思って見つけられるものでも無いしな……」
「それはそう」
おふざけ、子供っぽさが抜けない要。
でもそれはあくまで身内ノリであり、鷹遠はきちんと使い分ける要のそういうところに感心していた。
(だからって、甘やかしすぎた気もするけど……)
「─もし生まれ変われるのなら、俺はお前の子どもになって生まれてきたいな」
「え?どったの、急に」
「ん、いや……ふと思ったんだよ」
あの事件の日が、鷹遠の最初の記憶。
ぼんやりと、じんわりと、家族に愛されていた記憶はあれど、鮮明さは失われたまま。
暖かい家族像なんて、そんなものはわからないまま。
愛されたい。神夜に会いたい。
─もう、何百年も抱き続けている願い。
「いーよ」
「え?」
「だから、俺の子どもとして生まれてきなよ。大事にしてあげるから」
優しく目を細めて、楽しそうに笑う要。
「大丈夫。全部上手くいくから」
─要はいつも、遠くを見ていた。
それは鷹遠よりもはるか遠くを眺めていて、どこまでも自由を渇望し、楽しそうな要を守ることが、鷹遠の生きる意味となっていた。
そして、それからまた約400年くらい経って、
「う〜ん。人類、超進化したけど」
要はそう言いながら、何かを計算している。
「何してんの」
「え?鬼の里へ、手紙書いてんの」
「なんで」
「きっと、これから人類は大きな戦争をするから。その時、俺達は本能的にしんどくなるし、もしかしたら、利用されるかもしれない。それなら引きこもっててもらおうかなって」
「……」
多くの血が流れてしまう。多くの人が死んでしまう。
「止めたいけれど、それは、俺達の役目じゃない。─そうでしょ?鷹遠」
ずっと昔、教えたことを覚えていたのか。
自分を過信して、【役目】から飛び出すなという教え。
「……そうだな」
「俺達のこの手は、大事な人を守るため、大切な人と手を繋ぐためにあってほしいのにね」
─そして、予想通りの歴史となった。
「ん〜俺は結局、俺だけの番に出会えなかったなぁ」
要はそう言いながら、背伸びをする。
「死んじゃったのかな。出会えないのなんて、別におかしなことではないのにさ。千年近くも頑張ったんだもん。どっかで出会わせてくれても良くない?って思っちゃう」
ずっと、寂しい子どもだった。
寂しがっていて、愛に飢えていた。
それを彼自身は理解していて、大きすぎる愛の器は簡単に満たされないから、それを満たそうと思うことを止めるのだと、要は笑っていた。
番がいれば、それは満たされたかもしれないのに。
本能は抑え込めて、もっともっともっともっと─……。