世界はそれを愛と呼ぶ
「─約束通り、歴史書には【初代鬼帝・御園要】って書いたよ。姫巫女は鬼帝を産んではならないことも書いたし、家の制度も作り上げた。御前家を消せなかったことだけは痛かったけど、今の御園家は人類側だ。俺達があまり介入する事でもないし……ね、鷹遠、そろそろ還ろう」
「……どうやって」
「理から外れてしまった俺達は多分、もうどうにもならない。魂は永遠に現世に囚われて、抜け出せない。なら、その鎖部分だけを残して、輪廻へ還ろう」
「だからっ、どうやって!」
そんなことができるのなら、早く還りたかった。
早く還って、神夜を探しに行きたかった。
でもそれは叶わないと思っていたから、だから。
「……俺もね、知らなかったんだ。やっと知れたよ」
「……っ」
「ね、鷹遠」
気付いていた。頭のどこかで。
きっと、自分はわかっていたいんだ。
認めてしまえば、生きていけなくなるから。
「愛する人を、番を守るのに、森羅万象を修める必要も、従わせる必要も無かったんだよ」
─その一言は、鷹遠の中の何かを壊す。
ぼろぼろと言葉の代わりに零れていく雫は、既に遠く、もう思い出せなくなった声や顔を攫っていく。
「人の善性を信じられなくていい。疑ったままでいい。だから、俺と眠ろう。そして、還ろう」
ぎゅっ、と、抱き締められる。
「俺を守って、大切に育ててくれてありがとね。叔父さん」
ゆっくりと、意識が遠くなっていく。
「今度は、俺の子どもとして生まれておいで。ちゃんと番を見つけて、その場所を用意しておくからさ。─おやすみ」
そこで、鷹遠の意識は永遠に失われた。