世界はそれを愛と呼ぶ

第6節 秘宝

☪︎


「相馬様と慧様が暴れているわ」

「怒っているだろうね」

綺羽は柚琉と冷たい床に座り込んで、話していた。
暇を極めているのだ。それはもう。

遠くから聞こえてくる足音、雷鳴、叫び声。

「……完全には潰さないはずだよね?」

自然を破壊しない程度にして欲しいと、春の王として願いながら、綺羽が柚琉を見ると。

「う〜ん?慧は手加減をしないからね。何事においても。一応、慧の婚約者は、ちゃんと慧の元にいるから、完全まではしないと思うけど」

半壊くらいはあるかもね、と、柚琉は笑う。

「世間的には、異常気象だよね」

「今日、晴天の予定だったしね」

「被害損額、どれくらいになるかしら」

─何故、彼らがここまで落ち着いているのか。
それは単純に情報収集の為に、ここに閉じ込められているからである。
出ようと思えば出られるが、ここに閉じ込められている人々からは様々な話が聞けて、有意義な時間を過ごせるから、ここに残っているだけで。

「見張り、いなくなったわね」

「だね。─そろそろ、抜け出す?」

「そうねぇ。ある程度の機器、ふたりが壊しちゃってるだろうから……ああ、でも、ついでにここの人たち、逃がしちゃう?」

「受け入れ先がないでしょ」

「そこなんだよね〜あと、普通に走ってきたから、この数の人はどうしようもない」

早く助け出したいが、2人だけでは不可能なのは火を見るより明らかだ。
ここは、あの黒橋の街にある廃墟の地下にあったとされる牢屋よりも更に広く、恐らく、50名は下らない。

「─ならば、彼女を」

牢屋から脱走したタイミングで、聞こえてきた声。
見張りかと構えたが、現れたのは青年だった。
美しい金色の髪を持つ、少女を抱えた彼は眠っているらしい彼女を、ふたりの前に差し出して。


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