世界はそれを愛と呼ぶ



「─櫂、彼女と話がしたい」

寝室から出て、電話をかける。
ワンコールで出た相手に前起きなくそう言うと、返ってきたのは大きなため息と、軽快な『いいよー』という声。

『僕が誰にやられたのか、それを聞きたいんだろう?』

『お前は、安静に、という言葉が分からないのか』

『君がそばにいるなら、少しくらいの無茶は大丈夫だろう?─相手の彼には、この部屋まで来てもらうことになるけど』

『……はぁ』

『偉大な君には足労かけるが、お待ちしているよ』

彼女がそう言った瞬間、切れる電話。
恐らく、櫂が切ったのだろう。
櫂から送られてきていた、彼女の怪我の容態は本当に酷いものだったし、今もあんなに軽快に話せているのが謎なほど……勿論、話すのは全然後でいい。

その間、沙耶のことは相馬が守れば良い話。
黒橋家には恩義もある。そして、この謎を解決することは業界にとってもかなり大きなものになる確信がある。

転校することで、仕事が出来ないことが嫌だったが、それ以上に気になる事案が出てきた現状を考える感じ、裏で伯父が一枚噛んでいるとしか思えない。

普通の子供らしい生活を送って欲しい彼らからすれば、この一連の事件は渡りに船であり、相馬がいれば、御園家の権力を上手く活用できる健斗さんからも、伯父からの提案は良いものだったのだろう。

(沙耶は何故か、自分にはいないと思っていた“運命”だし)

黒橋家が治める街の歴史は、大まかにしか知らない。
あの街の警護体制も……様々な面から鑑みて、使えるものがあるならば、御園家から連れてこなければ。

そう思いながら、それを学ぶ機会が欲しい旨を、健斗さん宛にメールすると。

『わかった。すぐに場を整えよう。─沙耶は?』

と、簡潔な一文が返ってきたので、寝室に戻り、沙耶の寝顔を送るついでに、沙耶が作った昼ご飯も送り、食べている様子もさっき撮っておいたので、添付する。

─♪

すると、かかってきた電話。相手は、健斗さん。
なにかまずいことをしたかと、慌てて出ると。



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