空に還る。

辿る

「帰ってきても大丈夫やけんね?友達の弟預かっとるとか適当に言うけん」

「そがんでよかとね?適当やなかと?」

「どーでもよかとって!自分に害が無ければなんでも」

「そうや…。じゃあ、世話になるけん」

「うん。そうだ、きっちゃん。ちょっと外歩いてみる?」

「外?」

「きっちゃん、この町に住んどったとやろ?残っとる場所もあるやろ。たばこ屋もあるとやけん」

「そうやな。ちょっと出てみっか」

「あー、でもちょっと待って。さすがにそん格好は目立ち過ぎるけん着替えたがよかね。ちょっと来て」

きっちゃんを連れて、二階の自分の部屋に上がった。
クローゼットに仕舞っている、秋冬物の服と一緒に、
もう着れなくなった小学生の頃の服もまだ残っていたはずだ。
着ないんだからさっさと捨てればいいのに、
なんとなく捨てられずにいたんだ。

「あった、あった」

男子が着ていてもおかしくない、無地のTシャツと、カーキグリーンのハーフカーゴパンツ。
きっちゃんが着ている国民服をハーフパンツにしたようなデザインだから
きっちゃんも違和感なく着れそうな物があって良かった。

「似とるね」

「やろ?流行っとるとばい。カーゴパンツ」

「また横文字ば」

「もー。敏感過ぎ」

思った通り、きっちゃんにはカーゴパンツがよく似合った。
私は身長が一六四センチある。
きっちゃんは私よりもまだちょっと小さい。
小学生の頃の服がぴったりだから、一六○センチ無いくらいかな。
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