取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
「空港へお見送りは……」
「必要ない」
 優維の言葉にかぶせて千景が断る。

「ハワイ、いいなあ」
 直彦が呑気に言う。
「お土産買って来ますよ」
「楽しみにしてるよ」
 ふたりの明るい声が、どこか空々しい。
 会話に入る気に慣れなくて、優維はそうそうに食事を終えた。

「私、二階に戻る。洗い物はあとでするから」
「俺がやっておくよ」
「……ありがとう」
 千景に礼を言って、優維は部屋に戻る。

 と、机の上のスマホに着信履歴があって、すがるように手にした。
 相手は聖七で、優維はため息を漏らす。
 電話に出られなかったせいか、メッセージも届いていた。

 新情報があるので今度の土曜日に話がしたい、という内容だった。
 よりによって土曜日、と優維はまたため息をもらす。

 私でよければいつでも力になりますよ。
 そう言われたことを思い出す。
 頼ってもいいのだろうか。彼も千景を疑っているのに。

 だが、水上を尋ねるときに男性が一緒にいたほうがいいかもしれない。水上は気弱で優しそうだったが、もし犯人ならどういう態度に出るかわからない。
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