取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
 インターホンが鳴ったので直彦が対応に出ると、しばらくして優維と千景が呼ばれた。
 優維は首をかしげながら千景と連れ立って玄関に行く。
 そこにはライトグレーのスーツを着た青年がかしこまって立っていた。

 歳は自分と同じくらいか少し上のようだ。人当たりの良さそうな彼は整った顔立ちをしており、濃茶の髪は毛先が少し遊んでいておしゃれだ。透き通るように美しい薄茶の瞳が印象的だが、今は翳りを帯びている。

「優維、こちらは杜澤聖七(せな)さん。モリサワエステートという不動産会社の社長さんで、謝罪したいそうだ」
 モリサワエステートは急成長している会社だ。会ったこともないその社長が謝罪とは。

「昨日は父が申し訳ございませんでした!」
 彼は深々とお辞儀をした。
 優維は目を丸くして彼を見る。
 たっぷりと時間をかけてお辞儀をした彼は、頭を上げてまっすぐに優維を見る。

「父が借金をたてに結婚を強要したと聞きました。独身の私を心配した父の暴走です。なんとお詫びしていいか」
「昨日いらした方の息子さんですか?」
「はい」
 彼は申し訳なさそうに返事をした。

「父は金融会社を経営しております。元ヤクザで辞めてからかなり経つんですが、自分のせいで私が結婚できないのかと気に病んでおりました。こちらに未婚のお嬢さんがいると知って今回の暴挙に出たようです。本当に申し訳ございません」
 彼は再度、頭を下げた。
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