取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
 優維の心はそのまま彼に倒れ込んだ。
「あなたが嫌になったら、いつでも離婚してください。……お願いします。神社を助けてください」
「もちろんだ……が、俺から離婚をするつもりはない」
 彼は立ち上がって優維の前に跪いた。彼女の左手を取り、まっすぐに優維を見つめる。

「根古間優維さん、俺の人生にはあなたが必要です。結婚してください」
 吸い込まれるようなまなざしに、優維はまたくらくらした。
 取引と言いながらも、こうしてプロポーズをしてくれる。彼の優しさが嬉しい。

「お願いします」
 答えると、彼はやわらかく笑んだ。
「ありがとう」
 そうして彼女の左手の薬指にキスを落とす。
 優維はびくっと震えた。顔を上げた彼の目には甘さが漂い、優維は頬を朱に染めた。

「絶対に後悔させない」
 彼の宣言に、優維はときめきを押さえられずに頷いた。

 それからふたりで家に戻り、結婚の報告をした。
 父は喜び、千景に感謝の言葉を述べた。
 千景は翌日の再訪を約束し、帰っていった。




 意外な人物が現れたのは翌夜のことだった。
 そのとき、優維は茶の間で千景と一緒に婚姻届けを書いていた。彼はすでに記入済みで、証人欄もひとりぶんは埋められている。もうひとりの証人欄は直彦が書いており、優維が書けば完了だった。
 期日まで間がないので、届けはすぐに出しに行く予定だった。
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