取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
「てっきり東大とかに行って官僚になるんだと思ってた。——あ、ごめんなさい、普通にしゃべっちゃってました」
 優維は慌てて謝る。
「同級生だし普通に話してくれ、俺もそうするから」
「うん、ありがとう」

「君のお父さんとは何回も会合で会って話がはずんでしまって。根古間さんて苗字が珍しいからもしかして、と思ったらやっぱり君のお父さんだった。懐かしいなあって言ったら君と会わせてくれるって言ってくれたんだ」
「そうなんだ」
 懐かしむほどの思い出なんてふたりの間にはないはずだが、彼は高校生活が懐かしかったのだろうか。

「美しいな」
 唐突に出た言葉に優維は戸惑い、それから窓の外を見た。
「確かに、きれいですね」

「違う、君のことだ」
「え?」

「高校のときもきれいだったが、ますますきれいになった。振袖もとても似合ってる」
 優維は聞きなれない言葉に照れて顔を伏せた。

「草凪くんこそ、かっこいいよ」
「ありがとう」
 なんでもないことのように彼は応じる。こんな賛辞は腐るほど聞いたのだろう。

「草凪くんはどうして神職になったの?」
「きっかけは君だよ」
「私?」
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