取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る



 夕食の片付けは千景が一緒にやってくれた。
 直彦は家のことは最低限しかできない。やろうとしてくれた時期はあったが、あまりに下手だったので掃除以外はストップをかけ、以来、ずっと優維の担当だった。千景はなにかと一緒にやってくれるから嬉しい。

 部屋に戻って机に目をやり、置きっぱなしの手紙に気が付いた。
 中を見て驚いた。

『前略失礼いたします。
 杜澤聖七です。いきなり手紙をお送りする不躾をお許しください。
 あなたの夫である男性の正体についてお話したいことがあります。つきましては以下に連絡をいただけないえでしょうか。
 あなたを心配しております。
 草々』

 文面の下部にはスマホの番号が書かれていた。
 これはどうとらえたら良いのだろう。

 ピンクの封筒にしたのは友達からの手紙に見せかけ、確実に優維に届くようにしたのだろう。ご丁寧に便箋もピンク色だ。
 だが、書かれている内容は不穏以外のなにものでもない。
 さきほどの千景の様子が脳裏をよぎる。

『バレないように気を付けてください』
 つまり、バレてはいけないなにかがあるわけで。
 正体を聖七が知っているという。
 だが、どうして彼が知っているのだろう。
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