すべての愛を君だけに。
着信の5件は、全部歩ちゃんからだった。
雨の日に2件、昨日休んだ日に3件。
どうしてこんなにもわたしの心をかき乱すの。
放っておいてくれたらいいのに。
スマホに写る“歩ちゃん”の文字さえ辛くなる。
でも連絡先を消す勇気がない。
消せない、消せるわけない。
「………比嘉!」
自分を呼ぶ声に現実に引き戻される。
顔を上げると教壇に立っている歩ちゃんだけじゃなくて、教室中の視線が集まっていた。
何回も呼んでたのに気づかなかったパターンだ…。
「はい…」
「放課後、職員室来るように」
呼び出しはずるい。
連絡もしない、学校に来ても話さないわたしに先生という立場を使って呼び出すなんて…。