すべての愛を君だけに。
顔は見てない、はず。
だけど煙草の匂いと、声が歩ちゃんがすぐ傍に居ることをわたしに知らせる。
早く、ここから逃げたい。
「…一昨日、悪かった」
心臓がドクンと大きく音をたてる。
ついに確信の話。
別に昨日、わたしが休んだことは歩ちゃんにとってはどうでも良くて話したかったのはその話。
…聞きたくない。
今すぐ耳を塞ぎたい。
「比嘉には兄貴たちが帰ってきた時に、直接伝えようと思ってたんだ。…ごめん、驚かせて」
「大丈夫だよ…、大丈夫…」
「沙織には比嘉のことは伝えてあって姪だってことも知ってるし…」
“沙織”
…呼び捨てで読んでるんだ。
そりゃそうだよね、だって2人は付き合ってるんだもん。