すべての愛を君だけに。
わからない気持ち -歩 side-

沙織と出会ったのは教師になって最初の年だった。


初めての社会人生活、初めてのクラス受け持ち。


授業の用意に、会議、行事ごとの下調べ、書類作り。


多忙すぎて疲れ切っている時に、気遣うように声をかけてきてくれたのが沙織だった。






「望月先生、大丈夫ですか?」


「大丈夫です、すみません…」


「無理は良くないですよ、これどうぞ」






いつもは騒がしい校舎も、放課後にもなれば静まり返っている。


パソコンから目を離して見た外は、もう太陽が見えなくなっていた。


机の上に置かれたマグカップの中から柑橘系の香り。


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