すべての愛を君だけに。

何故かわからない。
気がついたら椅子から立ち上がり、出ていこうとする彼女の名前を呼び腕を掴んでいた。


振り返った彼女の…苦しそうな顔を見て
手を、離した。


静かな部屋に1人残される。


どうしていいか分からず立ち尽くす。


…追いかける?
でも追いかけてどうする。


追いかけたとして…なんて声かける?


俺が…何をしてあげられるって言うんだよ。


何も出来ないことに苛立ちが募る。






『歩ちゃんが…好き』






雨の声で、言葉が繰り返される。


胸ポケットから煙草の入った箱を取りだし、煙草を1本口に加える。


スーツのポケットから使い捨てライターを取り出す。


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