すべての愛を君だけに。

わたしは何も言わず、小さく頷いた。


歩ちゃんは微笑むと頬に添えていた手を離す。






「もう疲れたろ、寝とけ」


「…うん」






立ち上がる歩ちゃんを見て、急に不安と寂しさが押寄せる。


行っちゃう。


歩ちゃんは先生だからまだたくさんすることもあって、ここにはずっと居られない。


わかってる。
わかってる。


だけどわたしは、歩ちゃんの離れていく手を握った。






「…い、行かないで」






傍に居て。


誰でもない。


歩ちゃんに傍に居て欲しい。


迷惑だってわかってる。


困らせることだってわかってる。


全部、全部、わかってる。


< 172 / 393 >

この作品をシェア

pagetop