すべての愛を君だけに。
わたしは何も言わず、小さく頷いた。
歩ちゃんは微笑むと頬に添えていた手を離す。
「もう疲れたろ、寝とけ」
「…うん」
立ち上がる歩ちゃんを見て、急に不安と寂しさが押寄せる。
行っちゃう。
歩ちゃんは先生だからまだたくさんすることもあって、ここにはずっと居られない。
わかってる。
わかってる。
だけどわたしは、歩ちゃんの離れていく手を握った。
「…い、行かないで」
傍に居て。
誰でもない。
歩ちゃんに傍に居て欲しい。
迷惑だってわかってる。
困らせることだってわかってる。
全部、全部、わかってる。