すべての愛を君だけに。

わたしの手首を掴んでじっと見つめる。


心臓が壊れそうなくらい速く鼓動を打っている。


これ以上近づいたら聞かれそう…っ。


少し距離を取ろうと後ずさると、離れるなと言うようにあいた手で腰に手を回される。






「好きだって言われてからずっと…ずっと、雨を目で追ってしまってた。天ヶ瀬と一緒に居たり、名前で呼び合ったりしてるのを見て…嫉妬してた」


「…っ」


「どうしてくれんだよっ、どうして…」






腰に回された手に力を込め、引き寄せられる。


あっという間に歩ちゃんの胸の中、両手で抱き締められる。






「どうして、俺なんだよ…」






耳元に寄せられた唇から聞こえた声は、とても苦しそうだった。


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