すべての愛を君だけに。
新年明けて学校も始まり、通常授業も始まって少し経ったある日の昼休み。
普段は使われていない旧校舎に授業で使う教材を取りに来たついでに煙草を吸う。
口に咥えたまま、適当にしまわれた教材を漁る。
誰だよ、こんな雑にしまったのは。
ダンボールを動かす度に埃が舞うから咳き込みそうになる。
やっと目的のものを見つけた時には、灰が落ちそうになっていた。
脇に教材を挟み廊下に出ながらズボンのポケットから携帯灰皿を出す。
不意に顔を上げて向かい側にある建物を見る。
「……雨?」
…と、沙織が並んで歩いているのが見えた。
珍しい…どこか怪我でもしたのか。