すべての愛を君だけに。
嘘だと言えば信じてくれるのか。
そうすれば元に戻って…なんて都合のいいことばかりを考えてしまう。
「兄貴、ごめん…」
「…っ…、このっ!!」
唇を噛んでギロっと睨んだ後、兄貴は握られた拳が振り上げた。
頬に痛みが走りその場に座り込む。
口の中は血の味。
1度殴っても殴り足りない兄貴の気持ちはわかる。
座り込む俺の胸ぐらを再度掴み、2回…3回と殴る。
俺はただ静かに抵抗するでもなく受け止めていた。
いつしか止まった兄貴の手。
俺と同じように少し離れた地べたに座り込んでいた。
口角に指を当てると血が付いていた。
「…雨は俺たちが連れて帰る」