すべての愛を君だけに。

沙織先生になれたら。
歩ちゃんの隣にいるのも恥ずかしくない。


きっと堂々と隣を歩ける。


どうしてわたしは…。
歩ちゃんの姪として、産まれてきたんだろう。





「比嘉っ!!」






歩ちゃんと目が合う。
歩ちゃんがわたしを呼ぶ声。


聞こえた時には体が傾いていた。


急なことになにも出来ず、頭に強い痛み。
キーン…という耳鳴りと霞む視界。


…やってしまった。
何がどうなってこうなったかは分からないけど、体を動かせない。


遠くに聞こえる騒がしい声。


だから運動やりたくないんだよね…。


冷静に頭で考えていると
…なんだか体がふわふわする。


人の体温と心臓が早く鼓動を打つ音。
それから、煙草の匂い。






「…歩…ちゃ……」






歩ちゃんの煙草の匂い。


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