すべての愛を君だけに。
「天ヶ瀬、くん」
「んー?」
「近い…」
「近づけたの」
顔も近い…近すぎる。
綺麗すぎるくらい綺麗な顔がすぐ近くにある。
手を伸ばせばすぐ触れるくらい。
真っ直ぐ天ヶ瀬くんに見つめられる。
腰に回された手に力がこもる。
離れたらダメ、そう言われてるみたいに。
空いた方の手は頬に添えられた。
熱いくらい熱を持っている手。
わたしの顔なんて覆っちゃうほど大きな手。
…でも、きっと歩ちゃんの方が手、大きい。
天ヶ瀬くんの顔が近づいてくる。
唇が触れる…
はっとして避けようと思った。
「お待たせいたしました、ただ今より上演を開始いたします。ご観覧のお客様は…」