イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

「料理はするのか」

「しますけど……節約料理ですね」

「節約料理……例えば?」

「ん~……昨日は卵が安売りしてたので、もやしの卵炒めにしました」


 昨日の食卓を思い出しつつそう答えると、同情するような目でこちらを見てくる。でも、ここは同情しなくてもいい気がする。だって半額ですよ、半額。半額の卵があれば買うのが普通でしょ。もやしの卵炒め、美味しいでしょ。


「今日の夕飯、おごるぞ」

「あの、気を遣わなくてもいいですから」

「栄養失調で倒れられたらこっちが困る」

「もやしと卵は栄養満点なんですから心配ありません。それに昨日は豆苗も入ってましたし」

「……」


 また同情する目を向けてくる。確かにお金を持ってるエリート警視さんにとっては質素な食事に見えるかもしれないけれど、美味しかったんだから別に気にする事じゃない。

 その後、今度は湊さんの時計を買いに行った。予備の時計を使っているらしいんだけど、「時計をやったからお返しをもらった」と言うつもりらしい。確かに、仲良し雰囲気を出さないと上司に伝わらないよね。

 湊さんによれば、お見合いに行った事もちゃんと彼女は知っていて、終わった後に会いに行った、という事だそうだ。口裏を合わせるためとはいえ、嘘ばかりになっている。

 とはいえ、完全に嘘というわけではない。時計も一応私が選んだし、お見合いでは断った時点でお見合い終了、そして提案を受け入れた時点で彼女役となったし、その後ディナーのデザートが来たのだから彼女とデザートを楽しむデートをしたと言っていい。うん、大丈夫。


「さ、選べ」

「あの、本当に大丈夫ですから……」

「牛肉にするか。分厚いやつより薄切りの方が料理しやすいか。国産牛はこっちだな」


 最後の行き先は私がいつもお世話になっているスーパーとなった。お肉コーナーに向かうと肉を買ってやると言われてしまい、今に至る。

 牛肉の栄養を見誤るなよ、アルバイト。と言われてしまえば私は何も言えなくなる。

 私の目は半額シールの張られた豚肉の薄切りに向いていたけれど、それに気が付いた彼は私を牛肉コーナーへ連行。最終的には彼の選んだ薄切りの特上国産牛がかごの中に納まってしまった。

 ……さて、今日の夕飯は何にすればいいのだろうか。恐ろしくて手が出せなさそうだ。

 こっそりもやしを入れたけれど、却下されて違う野菜が入れられてしまったのは言うまでもない。もやしの食いすぎはダメだと言われてしまった。毎日もやしを食べている事は気付くか。
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