イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

 水中トンネルを渡りきる辺りで、湊さんに声をかけた人がいた。その相手は……私も見た事のある人だった。そして、それは二人だ。


「へ~偶然じゃん湊。あ、瑠奈ちゃんも! さてはデートだな~?」

「見れば分かるだろ。邪魔するな」

「ちょっと待ってちょっと待って、何、彼女さん独り占めしたいの? せっかく会ったんだから4人で回ろうよ」


 飲み会に参加していた二人で、カップルだと紹介された二人だった。彼氏の野木和也さんと、彼女の広山海さんだっけ。

 二人も仲の良いカップルらしく、私達と同じく手を繋いでいる。見ただけではあるけれど、お似合いのカップルだと思う。


「る~なちゃんっ! この先にペンギンが見られるコーナーがあるんだって。瑠奈ちゃんペンギン好き? あっ、それともイルカショー見る?」

「おいっ!」

「えぇと……」


 私の、手を繋いでいないほうの手を広山さんに取られ、さぁ~出発! と歩き出してしまった。これは、強制連行というやつですか。やばいな、警察の方に囲まれている私は大人しく連行された方がいいのかしら。

 そして、トンネルの先にあったのは……これは?

 つい、水槽の目の前に張ってある説明を凝視してしまった。あ、マンボウだ。マンボウってこんな感じだったっけ?


「和也にそっくりよね」

「え?」

「おい、聞こえてるぞ」


 これは悪口だろうか。マンボウ、可愛いと思うけど。

 今は、私と海さんを先頭に、湊さんと野木さんが付いていくようになっているけれど……変な事にならないかドキドキである。一応後ろに湊さんがいるけれども。


「わ~可愛い! カワウソ!」

「可愛いですね……」


 私の隣にいる海さんは、本当に女子力が高い。その隣にいる私は女子力がなさ過ぎて残念になっているように見えるだろうか。やっぱり海さんを見習ってマネしてみるべき?

 でも、海さんと同じくちゃんとカワウソも可愛いと思っているからまだセーフだと思う。女子力は塵ほどではあるだろうけれど残ってる。よかった。


「瑠奈」

「え?」


 カワウソを海さんと一緒に見ていた時、私の名前を呼ぶ湊さんの声が聞こえてきた。振り向くと、スマホのカメラレンズが私の方に向けてある事に気が付いた。


「海入った? 俺にもちょうだい」

「残念ながら入ってない」

「マジ?」

「瑠奈撮るなよ。有料」

「……お前、そういうところあるのな」


 写真を撮られたらしい。それに気が付いた海さんは、後ろから私を抱きしめ野木さんに写真を撮るようお願いしていた。たった今撮るなと言われていた事を知っているにもかかわらずだ。

 とはいえ、有料にしなくてもいいのではないだろうか。あ、まぁ、あと2ヶ月で彼女役が終わるのだからその方がいいのか。
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