イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。
美味しいうどんは、すぐにぺろっと完食してしまった。あぁ、美味しかった。
作ってもらったのだから片付けは私が、と言い出したけれど却下され、せめてお皿拭きは、と仕事をゲットした。
「このまま泊まってくか?」
「えっ?」
キッチンに二人並んで片づけていた時、湊さんから意外な言葉が出てきた。泊まる、という事は湊さんの家に泊まらせていただく、という事だろうか。
「もうこんな時間だしな。俺も別にいい」
「……いえいえいえ!! これ以上ご迷惑をおかけするのは!!」
「いや、迷惑をかけたのは俺の方だろ。こんなに遅くなってしまったんだ。明日の予定は?」
「……午後から、大学です」
「ならいいだろ。まだ眠いだろ?」
確かに、眠いけれど……流石に雇用主の家に泊まらせていただくのは、どうかと思うのだが。
「服も貸すし、近くにコンビニがあるから必要なものは調達出来る。ソファーもデカいから俺でも寝られる」
「え……あ……」
これは、本気なのだろうか。それとも、冗談なのだろうか。一体どっちだ。私は今、試されているのか? じゃあ、何故?
混乱していた時、耳元で囁かれてしまった。
「何、嫌らしいことでも考えたか?」
「湊さんっ!!」
「ははっ、冗談だ。だが、泊まっていってもいいし、嫌なら家に送る。どうする?」
「……帰らせて、いただきます」
「分かった」
冗談が過ぎる。そして心臓に悪い。しかも耳元で言わないでほしい。
いやらしい事なんて……湊さんの意地悪!!
心臓が騒がしいが、さすがに手に持っている皿を誤って落として割ってしまうのは冗談じゃないから平然を装った。落ち着け、と心臓に言い聞かせつつも静かにお皿をキッチンの台に置いた。
そして、ようやく湊さんの家から退散することが出来た。
「おやすみ」
「……はい、おやすみなさい」
……今日は、早くお風呂に入って寝よう。うん、それがいい。