イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

4.彼の嫌いなもの


 アルバイト期間は3ヶ月。あと1ヶ月で終わりに近づいてきている頃、とんでもない案件が舞い込んでしまった。


『瑠奈、またウチに来てくれないか』


 と、電話で湊さんに言われてしまったのである。

 はて、これは一体どういう事なのか。


『同僚達が俺んちで飯が食いたいって言い出してな。瑠奈も呼べってうるさいんだ。明日の夜、来れるか?』


 来れるなら迎えに行くとの事だった。その日の予定を確認すると、珍しくバイトが入ってなかったのでOKした。

 ……マジか。また同僚さん達とご対面する事になるのか。水族館で湊さんが帰った後の事を彼に報告すると問題なかったみたいだから、引き続きやらかさないよう頑張ろう。


 そうして迎えた、次の日。その日は夕方まで大学での講義があり、終わった後に大学まで迎えに来てくれることになっていた。大学じゃなくて近くのカフェに、とまた言ったのだが……大学に直接行った方が効率がいいとのことで聞き入れてもらえなかった。

 ニヤニヤした琳にエールをもらいつつ、湊さんを見つけて車に乗り込んだ。思った通りではあったが、女子大学生達の視線が痛い。


「家に向かう前にスーパーに寄っていいか。まだ買い物していないんだ。流石に7人分は冷蔵庫にないからな」

「あ、はい、どうぞ。手伝います」

「助かる」


 確かに、一人暮らしの冷蔵庫に7人分の食料は入ってないだろうな。

 7人分、という事は私達の他に5人が来るという事。じゃあ、あの日の飲み会メンバーだろうか。二回会っている海さんと野木さんも来るのであれば少し安心出来る。

 買い物をするためにやってきたのは、湊さんの住むマンション近くに位置する大きなスーパーだった。駐車場が広く、時間帯のせいか駐車している車が多い。


「初めて来ただろ。手は繋げないから迷子にならないよう気を付けろよ」

「大丈夫ですっ!」


 水族館でも言われたけれど、さすがにこの歳で迷子にはならない。これはからかっているのだろうか。
< 46 / 83 >

この作品をシェア

pagetop