イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

 熱を出して二日後に完全復活した私は、湊さんからお説教の電話をいただいた。ちゃんとした食事をしろ、夜更かしはするな、とまで。まぁ、次の日大学に行くとつい言ってしまって説教を受けたのも覚えているけれど。

 そして数日後、今日は珍しく一日お休みで、湊さんはお仕事だからアルバイトの予定もない。だから、リフレッシュのつもりで街中を歩いている。お金はないけれど、歩くくらいならお金はかからない。それに、今の私には気分転換が必要だと思う。いろいろと考えてしまってまた知恵熱を出してしまうかもしれないし。

 まだアルバイトは終わってないけれど、今日は気楽にいこう。

 けれど、ふと気が付いた。バッグの持ち手をかけていた肩が急に軽くなり、その横を走り去っていく男性が視界に入ったのだ。

 その男性の手には、見覚えのある私のバッグ。


「えっまっ待って!!」


 すぐにひったくりだと気がつき追いかけるけれど、成人男性に追いつくような身体能力はない。

 スマホは手元にあるけれど、あの中には財布や貴重品が入ってる。あのバッグを持っていかれるのは困る。

 どうしよう……と焦って追いかけていたら、誰かが男性を地面に押さえつけている場面が見えた。


「11時35分、と」


 そう言いつつ、彼は犯人に手錠をかけつつスマホで誰かに電話をかけ始めていた。着ているものからして、警察官。よかった、警察官いて……

 と、思っていたら、その警察官の顔に、見覚えがあった。


「あ、瑠奈ちゃんじゃん。これ、君の? 怪我はない?」

「は、はい、私のです。怪我もしてません」


 犯人を押さえつつ私を見上げた男性は、湊さんの同僚である野木さんだった。


「あ、ありがとうございます」

「いいっていいって、怪我がないのなら安心安心。あ、湊に言っておこうか?」

「あ、いえ、大丈夫です」

「そう?」


 涼しげな顔をしているけれど、じたばたする犯人をがっしりと地面に押さえつけている。すごいな。さすが警察官。

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