イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

 その後、風邪薬を飲みもう一眠りしろと強制的に寝かされた。さっさと風邪を治さなきゃアルバイトの仕事が出来ないから、気合いで治さなきゃ。終了日が目前なんだから、最後まできっちりと務めさせていただきます。

 けれど、思った。こんな事、契約の中に入っていただろうか。ただ湊さんの彼女役を同僚の皆さんの前で演じればいいだけの契約のはずなのに。

 でも、琳から私が風邪を引いたことを聞いて来てくれたことに、嬉しさが込みあがってくるのは確かだ。

 看病されるのは、いつぶりだか忘れるくらいだったから、そもそも看病してくれる人がいる事にも嬉しいところがあるけれど。そもそも風邪なんてめったに引かないけれどね。

 最後に風邪を引いたのは……恐らく高校一年生の頃。確か、朝から風邪気味で学校に行き、友達にバレてさっさと帰れと家に送ってもらった。けれど、家に母はいなくて、寂しくしていた時にその友達が料理の入ったお鍋を持ってきてくれた。

 ウチ秘伝の湯豆腐よ! これ食べたら絶対よくなるから! と言われて笑った記憶がある。

 確かに、次の日良くなって学校に登校した。あれは本当に凄かったなぁ……

 そんな事を思い出しつつ、眠った。

 けれど、次の日。美味しそうな匂いで朝を迎える事となってしまった。キッチンに立つのは、まさかの湊さんだった。


「……ずっといたんですか?」

「一旦帰ってまた来た。鍵、返さないといけないだろ。病人起こすわけにもいかないしな」


 朝起きてまた来てくれたみたいだけど、そこまでしてくれる事にも、無性に嬉しくなってしまった。……でも、お仕事は大丈夫ですか? と、逆に心配してしまう。

 でも、アルバイト期間はもう終わりが目の前。この時間は、もうすぐ終わってしまう事に残念感を抱いてしまった。
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